この本に載せた、唯一の昭和

函館の繁栄の基礎を築いた、淡路島出身の高田屋嘉兵衛。

地元淡路島でも、当然、郷土の生んだ偉人として

尊敬の眼差しを注がれ続けていることと思う。


実際に昭和60(1985)年、大鳴門橋が完成したことを機に、

嘉兵衛の持ち船だった辰悦丸を復元するという偉業を、

淡路島の造船所が自費で成し遂げた。


そして翌年、江差からの呼びかけが発端となり、

何とも粋な取り組みが実現される運びとなった。

昭和の辰悦丸が、北前船ゆかりの港を結ぶ航海に乗り出したのだ。


淡路島の津名港を発ち、北前船時代の港だった18港に寄港して

江差に無事到着した辰悦丸はその後、函館に入港する。


星野さんの写真には、その様子をとらえたカットもあるが、

一昨年に制作した星野さんの写真集

『あのころの函館を旅する 昭和40年代から昭和の匂いの残る平成のはじまり』には、

その写真をうまく収める場所がなく、泣く泣く掲載を見送った。


弊社の資金力では、星野さんの昭和の写真集の第二弾を出すなど困難。

そんなわけで本年3月の新刊、星野勲著『平成函館忘れない』にて

昭和の写真ではあるが例外的に掲載した。


下の写真はその1つ。背後には今はなきゴライアスクレーンも見える。


星野さんはこのとき、江戸時代の函館繁栄の礎となった辰悦丸と、

近代函館の発展を支えた青函連絡船がすれ違う「夢の交差」も

16ミリの動画で撮影されていた。

本冊には、その16ミリフィルムを切断して、スキャンしたものも収録してある。


平成函館忘れない

短いようで長かった平成時代。その間の函館の出来事を振り返ります。新函館ライブラリの函館本とも連動しています