東京ごっこ以前の風景

『平成函館忘れない』50・51ページの見開き、

平成17年6月の写真である。


今からすれば、気恥ずかしくなるほど派手な店構えだが、

かつて日本の観光地の土産物店は、概してこんなふうではなかったろうか。


筆者の勝手な解釈だが、

たいていの観光客は、地方都市に都会的なものを求めていなかったし

土地の観光業者もそれをよく心得ていた、

ような気がするのだ。


スターバックスコーヒーの日本上陸は、この翌年の平成18年だが、

その後もしばらくは、わが町にスタバがあるかどうかなど

誰も気にかけない時代が続いていたはずだ。


旅に出てまで、わざわざコンビニに寄らなくても…

キャンプに行って、テレビなんか観てどうする…


まだまだこんな感覚が残っていた。

しかし、あるときからその感覚が崩れ始めた。


非日常の旅に日常を求める。

時代の先行く、便利な日常。

その行き着く先は、旅する方も迎える方も「東京みたいに」。


何を求めて旅に出るのか、旅行者に何を提供するのか

どんどんあやふやになっていく。


遠くのものも、たいていは居ながらネットで買えるし、ネットで見られる。


この写真は本日(令和4年4月3日)撮影。

業種が変わり、外観が変わっても、建物は同じ。

銀座通りではないが、昔、丁寧に建てられた建物だけは残り続ける。

それがいちばんの函館らしさか。

平成函館忘れない

短いようで長かった平成時代。その間の函館の出来事を振り返ります。新函館ライブラリの函館本とも連動しています