写真も記憶があってこそ

星野さんの写真には、イカ釣り船の漁り火を撮ったものもたくさんある。

「遊覧船から撮れたのですよ」

当たり前のように、かつ懐かしそうに、そうおっしゃる。


時代を感じる話のようだが、

今もベイエリアから「観光遊覧船ブルームーン」というのが出ていて、

北は七重浜沖から南は旧寒川集落沖までぐるっと回る

ナイトクルーズもあるようだから、

「遊覧船から漁り火が」というのは、

近年のイカ漁不振のおかげで、昔話に聞こえるのかもしれない。


さて下は、私が平成21(2009)年6月に撮った写真。

場所は函館駅近くの海辺、遊覧船の看板には

西は福島漁港まで行くコース、東は恵山岬まで行くコースなどなど。


すごい、充実している。


だが、京都から足繁く函館に通い始めたころで、

西部地区の写真を撮るのに夢中だったから、

遊覧船のことなど「まったく記憶にございません」


当時は、これだけも遊覧船があったのか、

看板だけが残っているのか。

いずれにせよ遊覧船のコースはどれも、紛れもない事実。


ネットでサッと検索したけど、手がかり得られず。

デジタル版『函館市史』にも、

遊覧船に関する記述らしきは、戦前のものがわずかに1つ。


こういう歴史は残らないものなのだなあ、とつくづく思う。


日常の風景はまだしも写真で残せるが、日々の記憶は風化する。

星野さんの写真も、ご本人の記憶ともに残したいものだ。

平成函館忘れない

短いようで長かった平成時代。その間の函館の出来事を振り返ります。新函館ライブラリの函館本とも連動しています